モリスが主導したアーツ・アンド・クラフツ運動 について

今回は「アーツ・アンド・クラフツ運動」について紹介いたします。

アーツ・アンド・クラフツ運動というのは19世紀の後半にモリスが主導になり行われた「美術工芸運動」のことです。この運動が起こった時代背景には18世紀半ばから19世紀前半にイギリスでの産業革命が大きく影響しています。その時代、大量生産をされた低価格で粗悪な商品が世に溢れていました。この社会問題に対し、「役に立つかわからないもの、あるいは美しいと思えないものを家の中に置いてはならない」といった信条の元に運動を行いました。今の時代にも受け継がれるべき思想です。モリスは生活と芸術を統一させようという思想や実践の源流を作り、それまでの粗悪品から質の高いインテリア製品の量産体制に力を入れたことから商業的なモダンデザインの先駆者と呼ばれるようになりました。

1880年代には運動はイギリス全土に拡大しました。また、1887年にアーツ・アンド・クラフツ展示会協会が設立されたことで、定期的な展示会が行われました。1891年にはモリスが協会の会長に選出されます。協会には様々な建築家や芸術家なども参加したので運動はやがて欧米諸国にも広がることとなります。

例えばモリスの作品の中では植物などをモチーフにしたテキスタイルや壁紙があります。当初は技術が必要なプリント技法で作られた美しく人気のあるものでしたが、今もなお受け継がれ人々の生活を美しく彩っています。

運動の影響で、遠くにイギリス国内では美術学校や専門学校が新設されたり、刺繍やカリグラフィーなど手工業の技術の復活、小売店での販売の商品流通の拡大などもありました。

時代を超え、国を超え、今の私たちの生活も当然機械工業には頼るものの、手作業だからこそ実現できる製品や、生活と芸術の統一という面は、各々の暮らしの豊かさに少しでも取り入れたい考え方です。