ウィリアム・モリスの妻 ジェーン
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ウィリアム・モリスが1859年に結婚したジェーン・バーデン(のちのジェーン・モリス)について紹介いたします。
ジェーンはイギリスの絵画モデルであり、1839年にオックスフォードに生まれました。ジェーンはラファエル前派の画家たちを中心に絵画のモデルを務め、ミューズとされていたと言えます。モリスは、ラファエル前派の画家であったダンテ・ガブリエル・ロセッティとの出会いや弟子入りをきっかけに絵画の作成や、その後の内装芸術の分野に熱中していくこととなりますが、その際にラファエル前派のモデルを務めていたジェーンに出会い、貧富の差がありながらも結婚に至ります。
そして、新婚の二人が住む家として、仲間たちの協力のもと、あらゆる内部装飾に趣向を凝らした「レッドハウス」も完成し、そこから二人の夫婦生活が始まります。レッドハウスに住む間に、ジェーン・アリスとメイという二人の娘も生まれます。
しかし、実のところジェーンが愛していた人物は、モリスではなくモリスの師の画家、ロセッティでした。ジェーンとロセッティの不倫関係は1865年から1882年のロセッティの死の年まで非常に長く続いたとされています。ロセッティはジェーンをモデルにした数々の絵画も残しました。モリスも二人の関係を認知しており、ケルムスコットマナーという屋敷ではモリスとロセッティの共同名義で借りられました。世のスキャンダルから自分たちを守るための行動であったとされています。しかし、基本的にこの屋敷を主に使用していたのはジェーンとロセッティ。モリスはその間アイスランドへ出発し、翻訳などを行なっていました。その後ロセッティは神経衰弱などの症状があり、1874年にケルムスコットマナーを去りました。
こういった関係性を見るとモリスとジェーンの間柄は形だけの不遇な結婚であったのかという疑問が湧いてきますが、ジェーンは絵画モデルだけではなく、刺繍家としての一面もありました。ジェーンには結婚当初から刺繍の才能があり、モリスのデザインしたカーテンやファブリック類に刺繍を施すことで、芸術をさらに深める作品をモリスと共に残しました。
ケルムスコットマナーの寝室もジェーンと娘により、晩年のモリスのために美しく装飾されました。
ジェーンは、ロセッティとの関係という複雑な問題を抱えつつも、芸術活動の面において繋がりがあった二人は、結婚という結びつきを最期まで果たしたと言えるのではないでしょうか。