ウィリアム・モリスとラファエル前派
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ウィリアム・モリスの生涯を語るにあたり、「ラファエル前派」という単語が要所要所に登場します。
今回は「ラファエル前派」について紹介いたします。
ラファエル前派とはイギリスで19世紀の中盤から後半にかけて活躍した芸術家のグループの芸術形式のことです。
19世紀の中盤当時、ルネサンスの巨匠であるラファエロを理想とした古典的に偏った重々しい芸術が主流となっていた中、ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ、ウィリアム・ホルマン・ハント、ジョン・エヴァレット・ミレイらを含む7人の若い画家が集まり異を唱えるべく結成したのが「ラファエル前派兄弟団」でした。
彼らはラファエロ以前の、初期のイタリアルネサンスやフランドル美術のような自然をありのままに写し出す描き方を行いました。
彼らがラファエル前派兄弟団を結成し、活動を行なっていたことからウィリアム・モリスやその盟友のバーン=ジョーンズらも影響を受けます。
ジョーンズは聖職者を志す最中、芸術の道に進むことを決意し、大学を辞めてロセッティに弟子入りをしています。
またその後モリスもロセッティに師事し、画家を志すようになります。(その後、装飾美術の道へ。)
ロセッティ、ジョーンズらと共にオックスフォード・ユニオンの壁画制作への参加も行いました。
その後の1859年に建築されたモリスと妻・ジェーンの新居であるレッドハウス内の装飾美術にもラファエル前派の芸術家たちが協力し、そのデザイン思想が反映された絵画やステンドグラス、工芸品などが施されました。
レッドハウスの建築に関わる部分以外にも、ラファエル前派兄弟団の周辺にはモリスを始めとする多才な芸術家たちが集まりました。
この流れがモリスを中心としたのちの「アーツ・アンド・クラフツ運動」に繋がっています。
ラファエル前派兄弟団自体は、方向性の違いなどにより1852年には解散されてしまい、5年ほどの活動期間で短命であったとは言えますが、芸術全体を改革しようとする意志が、手工芸の復興や生活と芸術を一致させようとしたアーツ・アンド・クラフツ運動へと広がりを見せ、モリスやジョーンズらが芸術の道を目指した軌跡も、ラファエル前派の流れがあったからこそなので、その影響力は強かったと言えます。