ウィリアム・モリスが過ごしたレッドハウス

レッドハウスは、ウィリアム・モリスが妻ジェーンとの新婚時代の際に過ごした自邸です。

以前、「ウィリアムモリス の生涯」、「ウィリアム・モリスの盟友 バーン=ジョーンズ」のトピックの際にも名前が出てきた場所です。

ロンドンの郊外に1859年に建設されました。

設計は建築家の友人であったフィリップ・ウェッブの協力によるもの。

バーン=ジョーンズや当時の師である画家のロセッティらも内装に協力しました。

赤いレンガ造りのカントリーな外観が特徴的です。

外観だけではなく、内装にも生活と芸術の一致を目指したモリスらしいデザイン思想が散りばめられています。

レッドハウスではモリスの理想を実現させるための様々な試みが行われました。

モリスはレッドハウスの内部装飾のために、壁紙、家具、窓(ステンドグラス)、など様々な箇所を仲間との協力でデザインしました。

約160年前にデザインされた有名なモリスの植物模様の壁紙のオリジナルも貼られています。

現在ではレッドハウス内には展示がされているので、壁紙の製作方法についても紹介があり、当時の木彫り版も置かれています。

壁紙といえば、Trellis(トレリス)というモリスの初期のデザインの壁紙も、レッドハウスのローズの垣根からインスピレーションを得て製作されました。

壁紙の他にもジョーンズやウェッブらによりデザインされたステンドグラスや、ジョーンズの絵画で装飾された家具なども置かれていました。(現在はレッドハウスを離れています。)

以前に紹介をした、のちに世界に広がる「アーツ・アンド・クラフツ運動」もレッドハウスから始まったと言われています。

大量生産の粗悪品が溢れている社会への気づきを持ったモリスが、芸術家の仲間たちと共に、細部に至るまでをオリジナルで作り上げたレッドハウスが生活に豊かさを感じる空間となり運動の原点になりました。

1961年にはレッドハウスの建築が発端となり、ロセッティ、バーン=ジョーンズ、ウェッブら仲間と共に室内装飾品を製作販売するモリス・マーシャル・フォークナー商会(後の1875年にモリス商会となる)を設立しました。

手工業者の労働に対する尊厳を取り戻し、作る人にも消費者にも豊かさや喜びが与えられるべく芸術と生活を融合するというモリスの思想が、形になるきっかけとしてレッドハウスの存在は欠かせなかったといえます。

しかし収入や立地の都合より、モリスはわずか5年でレッドハウスを手放すことになります。

様々な持ち主に渡ることにはなりましたが160年以上たった今もレッドハウスは現存し、当時の美しい装飾が修復され再現されています。